歯医者嫌いのお子さまには
注射をされたり、歯を削られたり…、歯科治療は、大人であっても不快なもの。必要とわかっていても、なるべく避けたい事ですよね。
まして子供の場合、あらゆる意味で素直ですので、歯科治療など不快なものに対しては少なからず拒否反応を示します。
それでも5歳ぐらいになると、お子さま自身にしっかりと説明をすることで治療を受け入れてくれるようになりますが、中には歯科治療がどうしても嫌で、泣き止まない子や暴れてしまう子がいるのも事実。そして、そういったお子さまのほとんどが、以前に歯医者で何かしら嫌な思いをされた経験があるお子さま達です。
当院では、そのようなお子さま達に対しても焦らずに誠実に対応することで信頼関係を構築し、歯科治療ができるようサポートさせていただいておりますが、お子さまの歯医者嫌いを治すためには保護者の方のご協力も必要です。
お子さまが「泣く」のには、それなりの理由があります。
お子さまがずっと泣き止まないような場合には、まずはお子さまが泣いている理由をしっかり見極めることが重要です。大抵の場合、歯科医院でお子さまが泣いてしまう理由は主に3つ。「痛い」「不安・恐怖」「甘え」です。
今お子さまが泣いているのはどれにあたるのか、しっかりと理由を見極めながら、その理由に合った対応を施していくことが大切です。
1、痛くて泣いている場合
むし歯が進行してしまっていて腫れや痛みが強かったり、炎症が強く歯ぐきが腫れているような場合、麻酔が効きにくく治療にもどうしても痛みを伴ってしまうことが多々あります。
そういった場合当院では、まずは応急処置としてレーザーを用いて痛みを緩和させ、腫れや炎症を収めてから治療を行うようにしています。
また治療時にも、ほとんど歯を削らない、痛くない治療が可能な「カリソルブ」や「ドックベストセメント」なども取り扱っていますので、痛みに敏感なお子さまでも安心して治療することができます。
2、不安や恐怖で泣いている場合
歯科治療の恐怖を感じて泣いている場合は、これから何をするのか、なぜ治療が必要なのかをしっかりと説明することで落ち着くことがほとんどです。
まずは歯医者に慣れてもらうためのトレーニングをし、お子さまと歯科医師との信頼関係を築いた上で、現在の虫歯の状況をお子さま自身に説明しながら悪いところを治すために治療が必要であることを理解してもらいます。
まずは信頼関係の構築が肝になるため、最初は少し時間がかかるかもしれませんが、自らの意思で治療に取り組めるようになることで、その後の治療をとてもスムーズに進めることができるようになります。
3、母親や歯科医師に甘えて泣いている場合
特に痛みや恐怖を感じていないにもかかわらず、治療がイヤだという自己顕示のために泣いている「甘え泣き」の場合、時には甘えを許さない強い態度が必要とされる場合もあります。
「泣けば許される」といった認識は、通常は保育所や幼稚園などの集団生活の中で許されないことを学び減少していきますが、母親への依存度が高いお子様の場合、既に幼稚園に入っている子でも甘え泣きをすることは多々あります。
当院では、基本的に母子分離はしていませんが、保護者の方がお子さまの甘えを必要以上に許容してしまう場合には、一緒に診療室には入らずに待合室で待機していただくこともあります。
歯医者に連れて行く時に気を付けて欲しいこと
1、歯医者は怖いところではないという事をしっかりと説明しましょう
お母さまの中には、お子さまにしつけをする際に歯医者を恐怖の対象として話されている方もいるようです。
歯医者に対して悪いイメージが入ってないお子さんは、不安もなくユニットに座ってくれますが、「歯医者=恐怖」という認識をしてしまっているお子さまの場合、ユニットに座るどころか連れてくることすら困難になってしまう場合もありますので、歯科医院を恐怖の対象として話すのは控えるようにしてください。
歯科治療は、対応が遅れれば遅れるほど大きな治療が必要になってしまいます。
お子さまには、歯医者は決して怖いところではない、本人のために行く必要があるという事をしっかりと伝えるようにしましょう。
2、うそをついて連れてくるのはやめましょう。
嫌がる子どもを何とか歯医者に連れてくるために、「今日は何もしないから」「口の中を見るだけだから」などと嘘をついて連れてくる親御さんが多くいらっしゃいます。
日本小児歯科学会でも「なるべく嘘をついて連れてこないようにして下さい。かえって嫌がる原因になります。」とアナウンスしているほどで、これが逆にお子さまに「歯医者に行きたくない」と思わせてしまう原因になります。
お子さまを歯医者嫌いにさせないためには、何よりもお子さまとの信頼関係が一番重要なポイント。自らその信頼関係を壊してしまうような嘘をつくのは控えるようにしてください。
3、お子さまの生活ペースに合わせましょう
「昼寝の時間を避ける」「空腹の時は避ける」など、比較的子様の機嫌のいい時間帯に連れて行くようにしましょう。
「日本小児歯科学会」では、午前中に連れて行くことを推奨しています。
4、叱らないで、優しく接してあげましょう
お子さまが泣いて治療ができなくても、決して叱ったりしないであげてください。
怒られることで自信を無くしてしまったり、悪いことと認識してしまい歯医者さんに良くないイメージがついてしまいます。 優しく接してあげたり、励ましたりして挙げることが大切です。
お子さまを虫歯にさせないためのポイント
当院には、毎回笑顔で来院されてくるお子さまがたくさんいます。それは、虫歯の治療ではなく予防のために通っているから。痛い思いや不快な思いをしなければ、お子さんだって歯医者嫌いにはならないのです。
お子さまを虫歯にしないためにはデンタルケアももちろん重要ですが、日々の生活習慣なども大きな影響を受けます。ここでは日常的に気を付けて欲しい習慣についてご紹介します。
スプーンや箸の共有をしない
虫歯菌(ミュータンス菌)は、唾液を介してお子さまに感染してしまいます。大人の唾液がお子さまのお口の中に移ることがないように、スプーンや箸は大人用のものと子供用のものをしっかりと分けましょう。
1歳7ヶ月から2歳7ヶ月の約1年間がもっとも虫歯菌(ミュータンス菌)が移りやすい時期と言われています。この期間は特に、お子さまに食べ物を与える時は、必ず子供用のもので。食器もなるべく子供専用のものを使用し、大人が使用したものは使わないようにしましょう。
また、熱いものを冷ます際にフーフー冷ましをしてしまうと、唾液が入ってしまう可能性がありますのでなるべくしないようにしましょう。
添い寝しながらの母乳は控える
子供の虫歯発生率と母乳の与え方の関係を調べた日本の研究によると、2歳の時点で母乳を長期間飲んでいた子ども群は、飲んでなかった子ども群と比べて、虫歯のある子どもの数も虫歯の本数の平均も、統計的に多いことがわかりました。
特に、長期間母乳を飲んでる子どもは上の前歯が虫歯になりやすいというデータもあります。
理由としては、母乳を飲むときは舌を突き出して乳首を上顎に押し付けてしごいて飲むので上の前歯に母乳が付着しやすく、かつ母乳には7%ほどの糖分が含まれているため、母乳を寝ながら与える「添い乳」をした場合、虫歯になりやすくなってしまうのです。
特に夜間は、お口の中を浄化してくれる働きのある唾液の分泌が減少してしまうので、さらにむし歯になりやすくなります。上の前歯が生えたら夜の添い乳はなるべく控え、寝る前には丁寧に歯を磨くようにしましょう。
食事や間食は決まった時間に。ダラダラ食べをしない。
食事をするとお口の中は酸性に傾き、園さんによって少しずつ歯が溶け始めます。これを「脱灰(だっかい)」といいます。
脱灰は食後30分ほどは盛んに行われますが、唾液には酸を中和して脱灰した菌の表面を修復し、歯を強くする「再石灰化」の働きがありますので、この再石灰化がきちんと行われていれば、お食事によってお口の中が酸性になっても歯が溶かされて虫歯になることはありません。
しかし、ダラダラ食べ等で酸性の時間が長いと、再石灰化が間に合わず、歯に穴が開く虫歯に進行してしまいます。
また、頻繁に間食をしても再石灰化する前に脱灰が始まってしまうことになりますので、虫歯になりやすくなります。間食をする場合は食事との時間を開け、決まった時間に取るようにしましょう。